何かしらの理由によって、人や他の犬を『噛む』という行動を学習してしまう犬は少なからずいます。
甘え、遊び、大切なものを守るため…と、噛む理由は犬によってそれぞれ違います。
子犬の甘噛みであれば、比較的簡単なトレーニングと飼い主さんの犬との接し方を変えていくだけで、それを『犬が本気で強く噛む行動』へと発展することを防げます。
ただ、既に成犬へと成長している犬が長年噛むことを繰り返して学習してしまった噛み行動は、短期間で簡単に治すことはできません。
なぜなら、人や他の生物を噛む犬たちは、『噛むことによって自分に有利な形で事態の収束を図ることができる』と考えているからです。
成犬の噛む行動は、過去の経験とその行動の集積によって常態化していきます。
でも、人間と共に生活する家庭犬にとっては、噛むという行為は決してゲインを得られる行動ではありません。
寧ろその犬の行動範囲を狭める行為であり、場合によっては身を守るどころかその犬の命すら脅かす可能性もあります。
人間と共に生活する犬の噛む行動は、その犬に合った方法のトレーニングで一日も早く直してあげる必要があるのです。
先週からトレーニングを始めたトイプードルのまめくんも、人の手に対してあまり良い印象を持てないまま、今日までの日々を過ごしてきている犬です。
飼い主さんに強く噛み付くことはないのですが、顔の横に手を出されたり、知らない人に突然体を触られそうになった時には、噛んでしまうことがあるそうです。
飼い主さんのお話では、まめくんは生後3ヶ月の時、ワクチン接種後に強いアレルギー反応を起こしてしまい、かなり大掛かりな治療を受けたとのことでした。
命に関わる緊急事態だったので、それは仕方のないことではあるのですが、まめくんはその時の治療の経験によって人の手に対して恐怖を抱くようになってしまったそうです。
また、その後の社会化の不足も重なり、噛む事によって自分の身を守るようになってしまったと思われます。
まめくんの噛む行動を無くすためには、まずまめくんの人の手に対する印象と感情を変化させてあげる必要があります。
現在のまめくんは、人間の手に対して良い感情を持てずに、恐怖や嫌悪のイメージを持ってしまっています。
そんなまめくんの人の手に対する感情を、トレーニングによって悪いものから良いものへと変えていきます。
食べ物が好きな犬であれば、大好きな食べ物を人の手から食べさせることによって、人の手に対する印象を良いものへと変えていくことができる場合があります。
ただ、急に犬に近づいたり、食べ物を持った手をいきなり犬の目の前に差し出したりすることは厳禁です。
おやつを持った手を動かさず、犬が自ら近づいて来るのを待ちます。
犬が自分の意思で人の手に近づいて、自分の意思でその手から食べ物を食べることによって、人の手に対する感情を良いものへと変えていきます。
人の手に対する感情が良いものへと変わることによって、人の手を噛むという行動も変わっていきます。
NLPなどの人間の心理学でも言われていることですが、感情が変わることによってその行動は変わっていきます。
また、感情が変わらない限り、その行動も変わることはないとも言われています。
非常に多くの時間が必要になりますが、まずは人の手に対する犬の感情を変えてあげることが大切です。
犬が人の手に十分慣れて親しみを持ってくれるようになったら、手を使ってのターゲットトレーニングを行って、人の手に対する良いイメージを固めていきます。
それによって、手の誘導で犬に指示を出していくことも出来るようになります。
レッスンがない日も飼い主さんと一緒にターゲットトレーニングを積み重ねているまめくん、手による誘導できれいなオスワリができるようになりました。
一口に『犬が噛む』と言っても、その原因、理由はさまざまです。
犬のサイズに関わらず、噛む行動の抑制トレーニングには危険が伴う場合が多くあります。
決して無理をせず、信頼できるトレーナー、専門家に相談の上、トレーニングを実施してください。
そしてもうひとつ、毎回アズワントレーナーが訪問する際に時に実施しているピンポン吠えの抑制では…
飼い主さん宅にお伺いした際、家の中に入れていただく前にトレーナーがインターフォンを鳴らして、飼い主さんにまめくんの吠えを抑えるトレーニングをしてもらっています。
まだまだピンポンに対して吠えてしまうまめくんですが、前回よりは落ち着くまでの時間が短くなってきています。
次回のトレーニングが楽しみです！
asone : j.takagi
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