一度嫌いになってしまったものを好きになる…これはとても難しいことです。
人にとっても犬にとってもそれはきっと同じことで、短期間で簡単に感情を変えることは簡単にできることではありません。
好きなもの・嫌いなものは、過去に経験した良い思いで・悪い思い出にそれぞれ関連付けられているのです。
こんにちは。
アズワンの高木です。
例えば…幼い頃、毎日毎日リードとカラーを装着されて男性に力一杯引き倒された犬がいたとします。
その犬はどうなるでしょうか？
当たり前のことですが、リードとカラーを嫌いになります。
そして、男性もきっと苦手になるでしょう。
リードとカラーを見ると逃げ回ったり、男性を見つけると吠えたり噛んだりするようになるかもしれません。
その一方、幼い頃、毎日毎日おやつを食べさせてもらいながらリードとカラーを装着してもらって、優しいお母さんに楽しい散歩へと連れて行ってもらっていた犬は…当然、リードとカラーを見ると喜び、優しいお母さんを大好きになり、それが散歩好き・人好きへと繋がって行くはずです。
人間も同様です。
怖くていつも説教をする先生の姿を見かけると、見つからないようにすーっとその場を立ち去りたくなります。
その逆に、いつも優しく声を掛けてくれる先生には、好意的に話をしたいと考えるはずです。
嫌な出来事と嫌なもの・人は簡単に紐付きます。
その逆もまた然りです。
でも、それを入れ替えることは容易ではありません。
特に、一度嫌いになってしまったもの・人を好きにする…これはかなり難しい作業になります。
人の心理学でも嫌いなものを好きになる(というよりは嫌いなものを気にしなくする)ためのいろいろな手法がありますが、それは言葉や文字で表すことができるような簡単なものではなく、人類永遠のテーマなのではないかともいます。
言葉や文字でコミュニケーションを撮ることができる人間同士ですら難しいこのテーマ、言葉の通じない犬に対してどう伝えていくか…これは、ドッグトレーナー永遠のテーマだと思います。
今日からザックくんという5歳のボーダーコリーと一緒にトレーニングをさせてもらうことになりました。
飼い主さんとザックくんは、この春にとある地方都市からこの街へと一緒に引越してきました。
元々ザックくんはトレーナー仲間の生徒犬だったのですが、転居のためにトレーニングを続けることができなくなり、そのトレーナー仲間から僕がトレーニングを引き継ぐことになりました。
ザックくんは事情があり、元の飼い主さんと一緒に生活することができなくなり、現在の飼い主さんと一緒に暮らすようになりました。
元の飼い主さんと生活している頃、ザックくんは訓練所で厳しいトレーニングを受けたり、ドッグスポーツの教室で異常に興奮が高まるような練習をされられた経験あります。
その経験によって苦手なものが増え、簡単に興奮のスイッチが入ってしまうようになりました。
知らない人や犬が苦手で、散歩も苦手、車に乗ることや留守番も苦手…そして、スイッチが入ると人を噛んでしまうこともあるそうです。
現在の飼い主さんは、たくさんのストレスを抱えているザックくんを少しでも快適に過ごせるようにしてあげたい…ということで、引っ越してきてからもザックくんのトレーニングを続けることを決めてくださいました。
見知らぬ来客がとても苦手ということなので、まずは僕自身がザックくんに慣れてもらって、信頼してもらえるようにする必要があります。
限られたレッスンの時間だけでは解決できないこともあるので、普段の生活の中では飼い主さんにもトレーナーになってもらって、ザックくんをしっかり導くことができるように頑張ってもらおうと思っています。
苦手なことは多いけれど、飼い主さんを信頼しているザックくん、きっとできるようになるはずです。
人と犬は言葉で会話することはできません。
でも、言葉が通じないからこそすんなり伝えられることもあります。
言葉を使わずにうまく気持ちを伝える方法もあります。
きっとザックくんにも「それは怖がらなくても大丈夫」という気持ちを、言葉を使わずに上手に伝えることができるはずです。
asone : j.takagi
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