『ドッグスポーツ』という言葉から連想されるもの…きっと多くの人は、ディスクドッグやアジリティといった日本でもメジャーなドッグスポーツを思い浮かべるのではないかと思います。
でも、ドッグスポーツの世界はとてもディープで、日本ではあまり知られていないドッグスポーツもたくさんあるのです。
こんにちは。
アズワンの高木です。
今日は、セントゲームの中のひとつであるトラッキングというドッグスポーツを体験するために、エマを連れて都内某所にやって来ました。
日本ではドッグスポーツとしてまだ一般的になっていないセントゲーム、一体どんなスポーツなのかと言うと…犬の本能である『匂いを嗅いでターゲットを見つける』という行動を競技形式にしたものなのです。
『セント(scent)』とは、日本語で『香り』という意味です。
決められた特定の香り(匂い)を追跡して見つける…これがセントゲーム(セントトレーニング)と呼ばれるドッグスポーツです。
「セントゲーム…何か地味で面白くなさそう…」
セントゲームがどんなことをするドッグスポーツなのかを知って、そう思った方もいるかもしれません。
正直な話、初めてセントゲームの話を聞いた時は、我ながら不覚なことですが僕も同じように考えてしまいました。
しかし、このセントゲーム、犬の本場ヨーロッパではとてもメジャーなドッグスポーツで、競技会も開かれていて人気があるそうです。
災害救助犬や麻薬探知犬といった匂いを嗅いでターゲットを見つけることを職業とする犬たちのトレーニングには、必ずこのセントゲーム(セントトレーニング)がプログラムに組み込まれています。
そして、欧米では一般家庭で飼われている犬のトレーニングにも、このセントゲームを取り入れているそうです。
前述のとおり、セントゲームは犬の五感の中で最も優れている嗅覚を使い、ターゲットを犬に見つけさせるスポーツです。
多くの方がご存知のとおり、犬の鼻は人間の百万倍~一億倍という優れた嗅覚を持つと言われています。
犬はその優れた鼻を使って作業することがを好み、鼻を使うことによって脳が刺激されて本能的な欲求を満たすことができるのです。
このセントゲーム、まさに犬のために作られたスポーツと言えるのではないでしょうか。
短時間+短距離の集中したトラッキング(犬が地面に鼻を付けて匂いを辿っていく動作)は、長時間+長距離の全力疾走と同等のエネルギーを消費するとも言われています。
犬の本能を満足させて、体もしっかり体と頭もしっかり疲れさせることができるセントゲーム…こんな情報を聞いてしまったら、ちょっとやってみたいと思ったりしませんか?
僕は思ってしまいました!
ということで、今回は実際に本場スウェーデンでこのドッグスポーツを体験してきたトレーナー仲間がレクチャーしてくれるという願ってもいない機会に恵まれたので、匂い嗅ぎ大好きな愛犬エマと一緒にセントゲームを楽しんできました。
セントゲームと一口に言っても実はいくつか種類があるのですが、今回は『トラッキング』というゲームを体験してきました。
トラッキングは、スタート地点から犬が地面の匂いを辿りながら、ゴール地点にセットされたターゲットを見つけるというゲームです。
このトラッキングというゲームの中にもいくつかレベルがあるようなのですが、今回は参加者のほぼ全員がアブソリュートビギナーズということで、もっとも簡単なルールでトラッキングに挑戦しました。
トラッキングを行う際には、いくつか用意しなければならないものがあります。
まずは、ハーネスとロングリード(not flexi)。
トラッキングの最中、できるだけ犬が自然な動きをしながら匂いを追うことができるように、ハーネスとロングリードを装着させます。
カラーや短いリードを装着していると、犬の動きを不自由なものにしてしまう可能性があります。
今回のトラッキングでエマに装着したリードは10メートルのもの。
森林の中で10メートルを超える長さのリードを捌くのはかなり難しい作業となると思ったので、とりあえずこの長さでどんな感じになるのかを試してみました。
それから、ターゲットとなるおもちゃ等。
今回は、いつもエマが使っている使っているコングにレバーケーキを入れて、小さなぬいぐるみでフタをしたものをターゲットとして使用しました。
僕とエマはトラッキング初心者ということで、使い慣れて見慣れたコングに匂いの強いレバーケーキを入れてみました。
そして、何よりも大切なのが、トラッキングを行う場所です。
上の画像のような森林があれば、そこは最高のトラッキングフィールドになります。
匂いが飛びやすい乾いた地面よりも、匂いが付着しやすい落ち葉のある少し湿った地面の方がトラッキングには向いているそうです。
準備が整ったら、いよいよゲームの開始です。
まず、スタート地点と決めた場所に犬を待たせておきます。
マテが完璧でない子は、誰かにリードを任せるか、近くの木などにリードを結びつけて犬が動かないようにしておきます。
そして、犬をトラッキングさせるコースを歩いていきます。
人が歩くことによって、歩いた人の皮脂やフケ、髪の毛などが空気中に舞い、30分後にはそれらのものが落下して地面に到達するそうです。
人間にはそれらのものを視覚や嗅覚で認識することはできませんが、犬は嗅覚で皮脂やフケや髪の毛の匂いを取ることができます。
その匂いを追ってゴール地点にセットされたターゲットを見つける…これが本来のトラッキングのルールなのですが、初心者の僕たちにそのルールはあまりにも高いハードル…ということで、今回は少し簡単なルールでゲームを行いました。
トラッキングを行う犬のハンドラーは、犬を待たせた状態でスタート地点からゴール地点まで歩いて行ってターゲットをセットします。
その時に、二歩~三歩歩いたら自分の足跡の上におやつを置いて…また二歩~三歩歩いたら足跡の上におやつを置いて…と、ターゲットがセットされているゴール地点に辿り着くまでの間に、おやつを置いていきます。
そうすることにより、犬は人の匂いだけでなくスタート地点からゴール地点までの間に置かれたおやつを辿ることができるので、ターゲットに到達しやすくなります。
足跡の上に置くおやつも、匂いの強いレバーケーキを使いました。
そして、ゴール地点にターゲットとなるレバーケーキ入りのコングをセットします。
ゴール地点にターゲットをセットしたら、スタート地点から歩いてきたところとは別の場所…できるだけコースから遠く外れた場所を通って、スタート地点へと戻ります。
犬に正確なトラッキングをさせるため、トラッキングのコースの上や近くは通らないようにスタート地点に戻ります。
スタート地点に戻ったら、ハンドラーの体から出る匂いの素が地面に落下するまで15分ほど待ちます。
そして、犬に合図を出してトラッキングを開始します。
トラッキングの最中は、犬に対して声で指示を出したり、リードを使って誘導したりせず、できるだけ自由に犬に匂いを追わせます。
これがトラッキングの醍醐味です。
トラッキングを始める前、かなり心配していたことがあります。
匂い嗅ぎが大好きなエマは、僕やレバーケーキの匂いを追わずに好き勝手に森の中の匂いを嗅ぎまくるのではないかと…そうなってしまうと、ゲームとして成立しなくなってしまいます。
大きな不安を抱えてのスタートとなったのですが、意外や意外、エマはしっかりと僕の足跡の上に置かれたレバーケーキの匂いを追ってくれました。
僕の匂いもしっかりと追いかけてくれているといいのだけれど…
そして、スタート地点から20メートルほど離れた場所に設定したゴール地点に置かれたコングを発見!
僕の予想よりもしっかりと、エマはトラッキングしてくれました。
この結果にかなり気を良くしてしまった僕は、場所を変えた二度目のトラッキングでスタートからゴールまでの距離を5メートルほど長くしました。
それでもエマはほとんど迷わずにゴールまで到達することができました。
更に気を良くした僕は、三回目のトラッキングでは山の斜面と山道のカーブを利用して、ドッグレッグのような曲がったコースを作ってみました。
斜面とカーブを使ったコースはさすがにエマは難しかったようで、コースから外れたり、行ったり来たりを繰り返したり…と、かなり迷いました。
それでも時間をかけながら、最後はターゲットに辿り着くことができました。
いやいや、トラッキング楽しい!!
地味なイメージしかなかったセントゲームが、僕の中でとてもエキサイティングなものへと変わりました。
始めてみたら、ハマる飼い主さんもきっとたくさんいると思います。
アズワンでのトレーニングでも、このセントゲームを使うことはできないだろうか…そんなことを考えました。
このトラッキングという競技、ビーグルやバセットハウンドといったセントハウンド系の犬種が強いのかな…と思ったのですが、ヨーロッパの大会ではなんとチワワが優勝したこともあるそうです。
匂いを嗅ぐという行動は、犬にしてみたら本能的なものです。
だからきっと、どんな犬でもこのゲームを楽しむことができると思うのです。
手軽に楽しむことができて、犬の本能的欲求を満たすことができて、頭と体を使わせてあげることができるセントゲームというドッグスポーツ、騙されたと思って是非一度試してみてください。
全速力で走り回ったり、散歩でたくさん歩くことも大切な犬の仕事ですが、鼻と脳をしっかり使うことも犬にとっては大事なことだと思うのです。
asone : j.takagi
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